古き良き日本の暮らしのレストランを北アルプス
2024年7月9日
プロフィール
お名前
中村尹俊さん、西澤紀子さん
年代
80代、50代
居住地
小谷村
人口およそ3,000人が暮らす小谷村は長野県の最西北部に位置します。
面積の8割以上を森林が占め、標高1,600メートルから2,800メートルの高い山が連なる自然豊かな村です。
夏は登山やキャンプ、冬はスキーなど四季折々の景色を楽しみながらアウトドアスポーツを楽しむことが
できます。
そんな小谷村にある、体験型古民家レストラン「紀柳」。西澤紀子さんが父親の生まれ育った実家をリノベーションし、昨年レストランとしてオープンさせました。

父の思い出が詰まった実家をレストランに


紀子さんは幼い頃から母親の実家がある長野市で育ちました。父親の実家である小谷村の家は叔父が管理をしていましたが、2019年に叔父が他界し担い手に悩みます。家を壊すか売るか考えた結果、紀子さんはレストランとして改装することを決意。
「お店を始めることはとても悩みました。ですが、父が小谷村の家が大好きだと知っていたのでこの家を無くしたくないという気持ちが大きくて。何かやりたい気持ちはあったので、経験のある飲食業をやってみようかなと思ったんです。」と話す紀子さん。
父親の尹俊さんは「自分がいなくなったら家は私の代で終わってしまうが、娘がこうして引き継いでくれたことがすごく嬉しいですね。自分と同じくらいの年の人がお客さんとして来てくれると、懐かしい思いに浸っているような感じを見受けます。来てもらって自分の“ふるさと”に帰ってきたような気持ちになってもらえれば嬉しいです。」と話します。
お店は親子仲良く、父と母と紀子さんで切り盛りしています。
リノベーションの楽しさ


およそ築300年と言われている家は、昔ながらの囲炉裏や土間が残った空間。その良さを生かして紀子さんは改装していきました。
「土台や屋根、建具は叔父が修繕してくれた部分が大半だったんですが、レストランにするために厨房をつくったり、トイレをきれいにしたりました。全てが力仕事で大変だったんですが、初めてやることばかりで楽しかったんです。このリノベーションを通して父との会話も増えて。道具の使い方を教えてもらいながら、改めて父を尊敬しました。」
古き良き日本の暮らしを大切にしたレストランでの体験
「紀柳」では、「かまど炊き体験」をすることができます。かつては各家庭にあった日本伝統の調理設備「かまど」。今となっては珍しく、レストランに訪れる年配のお客さんには懐かしい味が、若年層のお客さんには新鮮な体験が喜ばれています。
体験者自ら薪割りをしてかまどに薪をくべ、火加減や水加減を調節しながら丁寧にご飯を炊き上げます。団らんの時間には、紀子さん特製のご飯のお供に合うおかずも食べることができます。
「まだオープンしたばかりですが、これからたくさんの人に来ていただきたいです。この店のテーマが、“日本文化の伝承”。親子三代で来ていただいて、おじいちゃんおばあちゃんがお孫さんに昔の暮らしを話す空間をつくれたら理想です。」と紀子さん。

小谷村で暮らすこと
「小谷村に住む人々は、家同士のつながりが密接。昔は近くの家に気軽に立ち寄って話をしているうちに、囲炉裏を囲んでご飯を食べたりしていました。今も昔と変わらずそういう人と人のつながりがあります。」と尹俊さんは言います。
「私は父と真逆で小谷村の人たちのことをまだ全然知ることができていません。地域の皆さんのお顔を覚えて、自然とここに集まってもらえるようなお店にしていきたいです。」と紀子さん。
地域の人とのつながりを大切に、今日も小谷村でレストランを営みます。
