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地域の古き良き伝統を次世代につなげる佐久

地域の古き良き伝統を次世代につなげる

プロフィール

お名前

金子久登己さん/加藤夕紀子さん

年代

30代/40代

居住地

佐久市

居住年数

5年

暮らしの経緯
金子さん:東京で都市計画とまちづくりの仕事に携わったことから、『地域の中に入って地域のために働く仕事』を模索し、佐久市の地域おこし協力隊として、伝統の凍み豆腐作りを継承する道を選びました
加藤さん:東日本大震災後、価値感が転換し社会貢献をしたいという想いに。そして地域おこし協力隊を通してそれを実行する
暮らしの中で大切にしていること
金子さん:仕事が生活の一部なので、遊び心を忘れず楽しんで仕事をしたい
加藤さん:本来の自分らしく生きるため、自分の心に従うこと
これからの暮らしの希望
金子さん:農産物や加工品を通し生産者の思いも伝え、道の駅が交流や福祉の拠点として地域のためになる場所にしていきたい
加藤さん:循環型社会を体現できるよう、自分のできる小さなことを粛々とやっていきたい
住まいの変遷
金子さん:東京時代は実家の1軒屋→賃貸マンション→佐久市で協力隊をしながら教員住宅→卒業後に住宅兼店舗•製造所
加藤さん:東京時代は実家の1軒屋→賃貸マンション→佐久市で協力隊をしながら賃貸アパート→空き家マッチングで貸家

「伝統を継承しながら、時代に合った
新しい人生のかたちを模索したい」

手前はお米や大豆を蓄える蔵。中央が金子さんの凍み豆腐の店舗兼製造所。その隣が住居

2016年から佐久市の地域おこし協力隊として活動を始めた金子さんと加藤さん。金子さんは、1年目に浅科地区でお米と豆腐・伝統食“凍み豆腐”作りを教わり、翌年は当時最高齢だった82歳の作り手に凍み豆腐作りを学びました。

 

400年以上も受け継がれる矢島の凍み豆腐ですが、1960年代には60軒余りいた生産者も高齢化で今は5軒程となっています。

 

「私に豆腐作りを一から教えてくださった師匠が、誇りを持って手作りする姿がかっこ良くて、私もその歴史を継承していこうと決めました。伝統があるから地域は輝ける」と金子さん。

 

そして、3年目の冬、「信源豆腐店」を開業。その昔、豆腐作りに使われていた家屋を師匠から紹介され、店舗兼製造所として冬の間、凍み豆腐作りに使用して、隣の家屋で家族3人暮らしています。身近に広がる長閑な田園風景や浅間山を眺めて疲れた体をリフレッシュさせています。

「400年続いてきた歴史を若い世代に伝えていくのが自分の役割」

写真:金子さん提供 冬は住居の隣の製造所で早朝から豆腐を作り、“凍み豆腐”作りをする金子さん

「豆腐は生き物」との今は亡き師匠の教えを守りつつ、4年目には金子さん流の新たな作り方にも挑戦しました。長野県で栽培される青大豆を使い、緑色の凍み豆腐も製造•販売。お客さんにも珍しがられその層も広がっていると言います。

「きれいな緑色の凍み豆腐ですね」「大豆の風味がしっかりあって、とてもおいしかったです」

 

また、小学校では出前授業も行い、凍み豆腐の歴史や作り方を教えています。

児童から「ぼく、将来、先生になってこの授業をして凍み豆腐作りを教えるから、それまで頑張ってください」と言われたことが、とてもうれしかったと言います。

企業に属さず独立した暮らし
「農を取り入れ四季を感じたり心の豊かさを」

写真:金子さん提供 手前は金子さんが作る「凍み豆腐」。奥が加藤さんが作る「まこも茶」

一方、東京から来た加藤さんは「食と健康」をテーマに協力隊の活動をしていました。

「協力隊時代、『まこも』を知りました。調べるうちに抗酸化作用が高くデトックス効果も高いと言われていることも分かり、興味が湧き栽培を始めました」と加藤さん。

しかし、農業初体験で栽培に関して躊躇していました。「手伝ってやるからやってみな」地域の人のその一言が背中を押してくれたそうです。協力隊卒業後は、所属するNPOの理事が所有する空き家を借りられることになり、自宅でまこも茶を製造しながら暮らしています。

「空き家をマッチングで有効利用しながら、心豊かに暮らしたい」

写真:加藤さん提供 オーナーが所有する仏壇やご先祖の遺影、だるまが残された部屋。オーナー(左)と加藤さん

物件を借りるにあたり、大家さんからの条件は「仏壇の部屋はそのままで、それ以外の家財道具は据え置き。使う分は使って不要分は廃棄して欲しい。また、正月はだるまの目入れに、お盆は迎え火・送り火のために私が来訪すること」だったのです。

不用品は処分し、大事なものは残したまま空き家を地域のために生かせないかと考えていた所有者と、残ったままでも借りたい人の意向がまとまった“空き家マッチング”となりました。

小さなビジネスをいくつか組み合わせ、
地方ならではの暮らし方を楽しむ

台所では、いつもポットに入れまこも茶を愛用

東京と地方、両方の暮らしを経験し、加藤さんは次のように話します。

 

「東京は消費型の街だけど、地方はクリエイティブな街だと思います。何か創りたいという人には向いていると思います。地方は無いものも結構あるので、買うのではなく自ら創り出す人が多いんです。何かやりたいとアウトプットすることでそれを手伝ってくれる人も見つかりやすい。

人のつながりが強いからですね。地方の暮らし方の一つに循環型の社会を体現しやすいという特徴があると思います。食物も自分で作れ、作ったものも周りとのつながりが強いから回しやすいです。独立し、小さな事業をいくつか組み合わせる暮らしの中に、農を取り入れることで、四季を感じたり心の豊かさを感じることができると思うんです。これって生きづらさを感じている人は大分楽になれるんじゃないかなと思っていて、こういう暮らし方は増えてくると思っています」

 

そうして金子さんと加藤さんは「お互いに足りないところを補い得意分野を生かし、未来の世代へ最善の形で渡せる地域になるように」と、2019年に共同代表として「合同会社TEAM3939」を設立。現在は、凍み豆腐やまこもの6次産業化に加え2020年から道の駅「ほっとぱーく浅科」の運営も行っています。生産者からは「いつも、ありがとう。10年後も農業ができるように期待しているよ」と頼りにされているようです。

今後は、「売るだけでなく、道の駅を交流や福祉、防災の拠点として地域に開かれた場所にしていきたい」と二人は希望を語り合います。

耳寄り情報

金子さん:借りられるかは分かりませんが、矢島地区にはその昔豆腐屋だった空き店舗が何件か残っています

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