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地産材を利用した「ふだん使いの木の暮らし」上伊那

地産材を利用した「ふだん使いの木の暮らし」

プロフィール

お名前

倉田秀二さん

年代

70代

居住地

伊那市

居住年数

70年(新築後3年)

暮らしの経緯
地元伊那市で塗装業を営み60年、3年前に自邸を新築
暮らしの中で大切にしていること
家庭に笑顔のある暮らし
これからの暮らしの希望
家族が健康で心豊かな暮らしになればいいなと思います
住まいの変遷
旧店舗併用住宅より、3年前に戸建て住宅を近所に新築 

3年半の歳月をかけて完成した、地産材を利用した住まい

倉田さん宅の外観
1階のご夫婦の部屋からは、気持ちが外に向かうようウッドデッキを介して庭とつながった設計に

県内伊那市出身の倉田秀二さん。地元で両親が営んでいた塗装業を若い頃から手伝い、60年近く仕事に励んできました。6年ほど前に先代より家業を引き継いでいます。

以前は、家業の店舗を併用した同居住まいでしたが、世代交代とともに念願だった自邸を新築することにしました。

設計は建築士の息子・政人さんに依頼。秀二さんは「暖かく居心地の良い家」を希望したそうです。

地域の中で地産材が循環する仕組みを目指して

薪と原木が積まれている様子
秀二さんの自宅と隣接する息子さんの事務所の周りには常時、薪と原木がストック

住まいには、地元で育った木材を用いるほか、日々の暮らしの中にも取り入れることを目指したと、息子の政人さんは言います。

「以前、参加した地産材を利用したボランティアと、里山の現況を知る勉強会で、地元で育った木を地元で使う、木材の地産地消の大切さを知りました。

この地域に限らず、以前は暮らしの中に木の文化があって、普通に地元で育った木が地域内で流通し使われていましたが、生活様式の変化や流通の多様化などで、あまり使われなくなりました。そこで再び地域内で流通し循環するようになればと思い、普段の暮らしの中で必然と木を使う生活を目指しました」  

元木工職人だった祖父からも、「かつては地元で育った木を使った家具屋など、木に携わった産業も盛んで、職人も多かった」と政人さんは聞いたそうです。

地元の木が使われなくなった影響は産業だけでなく、直接、山の整備や里山そのものの価値につながっています。

家造りは、計画から木材調達に始まり、3年半かけて完成しました。

住宅を造る地産材の流通量が少なかったので、林業士に相談し、市内複数の山から原木を集めてもらいました。製材所に集まった木材は、製材加工・天然乾燥し、建築材として整うまでに2年半かかりました。

「地元で育った木を使うことは、運搬にかかる費用を抑え、その分、木自体の価値を高めます。何より地球環境にやさしい」と政人さんは話します。

環境にやさしいウッドボイラーで、
すべての暖房と給湯の温熱をまかなう

ウッドボイラー
ウッドボイラーに薪を入れる秀二さんと政人さん。隣は温熱を蓄える貯湯室

日々暮らしの中で使われる暖房や給湯の熱源は、地産材の薪を燃料にウッドボイラーでつくり自給しています。

薪は山の事業者と協定を結び、地元で育った木の中で他に用いられた端材や規格外の未利用材、または払った枝などの処分材のみを安価に調達し、薪にかかるコストを抑えています。仕入れた原木は通年使えるように、秀二さんと息子の政人さんが男手仕事として薪をつくり、家の周りにストックしています。

「ウッドボイラーで薪を燃やしてお湯をつくり、5つの蓄熱タンクへ貯めています。

蓄熱した温熱は、タンク内の熱交換器を介してパネルヒーターに送り、建物の暖房の他、給湯の全てをまかなっています。また、温熱は父母の自宅だけでなく隣接する自分の事務所へも供給し、2軒でシェアしています。

この設備は、冬場に1日1回の稼働ですべての暖房と給湯をまかなえる容量となっていますが、夏場は暖房を使わないため、1回の蓄熱で5日程度の熱供給が可能です。

しかしこれ以上に寒冷地、信州でのメリットは、電気や灯油を燃料とせず、地元で育った木の未利用材を活用し温熱を安価につくり利用できる点と山に残されていた材にも価値がつき、環境にも山側にも寄与できる点です」と政人さん。

3年が経ち、今や薪は地域コミュニティのひとつのアイテムに

食事風景
 
食事後の様子
エアコンやストーブは設けず、暖房はリビングダイニングに設置される銀色のパネルヒーターのみ

新築して3年。現在、お昼や夜の食事は、秀二さんと妻の蓉子さん、近くに住む政人さん夫婦とお孫さんの5人でテーブルを囲むことが多く、皆さん、薪を使った木の暮らしを楽しんでいるようです。

秀二さんは「お風呂に浸かる時も、じんわりと体の芯まで温まる」と話し、妻の蓉子さんは「ふた冬過ごしましたが、冬でも室内は20度くらいで暖かくパネルヒーターの見た目もすっきりしていていいですね」と満足そう。

政人さんの妻は「薪がたくさんストックしてあるので、自宅に薪ストーブのある友人が遊びに来た時は、薪をお裾分けします。そうすると喜んでいただけるし、自分たちも温かい気持ちになります。薪を通していろんな方とのつながりができました」と話します。

夫の政人さんも「この地域は薪ストーブのある家が多いんですが、薪がコミュニティの一つのアイテムになっています」と教えてくれました。

そして、このような長野県産材を使った家造りと毎日の暮らしに地元の木材が密接につながっている点を評価され、建築士の政人さんは長野県の「住まい方コンクール」で優秀賞を受賞されました。

今後について秀二さんに伺うと

「家も新しくなり、家族みんなの暮らしがより心豊かになれば いいですね」と話してくれました。

窓越しに見える倉田さん家族
 

耳寄り情報

長野県林務課森林整備事業助成金と伊那市産材利用促進事業補助金を利用しました

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