プロフィール
お名前
ウチダゴウさん
年代
30代
居住地
安曇野市
居住年数
2年
- 暮らしの経緯
- 大学卒業後、大学のボランティアセンターの派遣職員を経て、2010年に妻と一緒に県内松本市へ移住。2018年に安曇野市に住居とアトリエを移転
- 暮らしの中で大切にしていること
- 今住んでいる場所の自然や森といった環境をできる限り守りながら生活をする
- これからの暮らしの希望
- 安曇野の自然との付き合いをもっと深め、より良い詩が書けるよう、またそれを読んだ人が自然に対して思いを馳せられるような詩を書いていきたい
- 住まいの変遷
- 埼玉の一軒家の実家→松本市で貸家→安曇野で住居兼アトリエを新築
地域のローカルネットワークがつないだ縁で安曇野へ
長野県安曇野市は人口約9万6000人が暮らす中部に位置する市で、雄大な北アルプスとのどかな田園風景が広がります。有名な大王わさび農場や穂高神社もあり、観光客や移住希望にも人気の市です。
詩人・グラフィックデザイナーのウチダゴウさんは、2010年に埼玉から松本市へ移り、その後2018年に松本市から安曇野市へ住居とアトリエを移しました。
ウチダゴウさんは大学卒業後、埼玉県にある実家で、高校生の頃から続けていた詩の活動を行うかたわら、母校の大学のボランティアセンターの派遣職員として、イベントの広告デザインなどの仕事を行っていました。
4年間の派遣職員の契約が終了したタイミングで実家を出て、本格的にフリーランスとして独立、活動することを決意。
以前から旅行でよく訪れていた松本で古民家を見つけ、奥さまと一緒に2010年に移り住み、アトリエ「してきなしごと」を開きました。
季刊誌で詩の連載、詩集の出版、アートワークなど、さまざまな創作活動を続けながら9年間、松本市で暮らしたウチダさんは、もう少し自然の多い静かな環境、人とほどよい距離を取れる場所を希望して移転を考えるようになりました。
条件に合う場所を探していたところ、知人から安曇野にある良い土地を紹介されたウチダさん。早速、土地の持ち主の方に連絡をしたところ、なんと偶然にも持ち主の方は、ウチダさんのお客さまのご友人。
そのため、持ち主の方もウチダさんのことを知っていて、土地の売買は非常にスムーズに進んだそうです。
土地を購入したウチダさんは、家の間取りなどを自ら考案し、それを知り合いの設計士に図面にしてもらい、高気密・高断熱に詳しい工務店に依頼。
こうして2018年5月、安曇野市にウチダさんの住居兼アトリエが完成しました。
スコットランドの「心地よく過ごせるゲストルーム」
2階の天窓からは心地いい光りが差し込み、ゲスト用の本棚も設置
ウチダさんの実家にはゲストルームがあり、親の親しい友人がよく泊まりに来ていたそうです。
そのような習慣が身近にあったこともあり、家の設計を考えた時に、一番初めに決めたのが2階のゲストルームでした。
部屋の雰囲気などは、ウチダさんが定期的に訪れているスコットランドのホームステイ先の「屋根裏部屋のゲストルーム」を参考にされたと言います。
「毎年、スコットランドを訪れていて、最初の年に、ホームステイした家の屋根裏部屋がすごく良かったんです。キッチンとかバスルームは共用でしたが、ゲストルームにはベッドと机がありプライベートな空間が確保され、とても居心地が良かったんです。だからゲストには『心地よく過ごしてほしい』という思いもあり、自分の家なのにゲストの部屋を最初に決めたんですよ(笑)この土地でゲストルームがここだと、この風景がこの窓から見えるなとか…」
また、スコットランドで過ごした良い思い出の一つに暖かな暖炉もありました。
「ジャックラッセルという犬と暮らしている老夫婦の家に泊まったことがあったんです。犬が川遊びをしてびしょ濡れになるんですが、びしょ濡れのまま、地下にそのジャックラッセルが歩いていって、暖炉の炎で気持ち良さそうに暖まるんです。その風景が、ほほ笑ましくて、良いなと思いましたね」
そうして、1階のリビングには暖かな薪ストーブが置かれています。
また、住宅に使用している主な木材は長野県産のカラマツで、あえて県産材を使用した理由をウチダさんに尋ねてみました。
「信州の魅力は自然の生態系があってこそ。森も伐採して整備しないと死んでしまう。だから後から来た人間が何かしら貢献しないといけないと思いました。また、カラマツ自体も時間が経つにつれ、焼けて赤みを帯びてくるところが面白いんです」と語ってくださいました。
自然のエンターテインメントを楽しめる暮らし
1階には詩の創作やデザインなどを行うアトリエがあり、隣には仲の良い作家などが展示会を行うためのギャラリーも併設。
ここでウチダさんは詩の創作やデザインを行っています。
休みの日は庭の手入れなど自然と触れ合うことが多く、現在、庭にあるクロモジ・オトコヨウゾメ・ローズマリー・ラベンダー・セージといった、さまざまな樹木やハーブもすべてウチダさんが植えたそうです。
「毎日、庭をいじったり、自然を観察していても飽きない。こうした人口密集を避けて“自然のエンターテインメント”を楽しめるのは、信州ならではだと思います」とウチダさん。
さらに、ここでの生活について伺うと「この信州の自然は作品に良い影響を与えています。また街や情報からある程度距離を取った場所に住むことで、良い意味で人や情報から適度な距離感を保てるようになりました」とのこと。
詩を通してみんなが自然を追体験できるような
作品を作っていきたい
安曇野の暮らしを始めたことで、自然や物に対する考え方や詩を通じて伝えたい思いも変わったというウチダさん。
「こうした暮らしの一つ一つが詩にも反映される。安曇野で暮らし始め、より自然を観察する機会が増えたので、今後はもっとこの自然との付き合いを深めながら、良い詩を書いていきたい。僕も詩を楽しみ、それを見た人もその詩を通して安曇野の風景や自然を追体験し、思いを馳せてくれれば」
もともとは30代や40代といった同世代のファンが多かったそうですが、最近では20代や高校生のファンも増えているのだそう。
「高校生の琴線に触れる詩が書けているのがうれしい。若い人たちにここの景色から生まれる詩を読んでもらい、彼らが大人になった時に自然を大事にするようになってもらえたら」と話してくださいました。